上意討ち 拝領妻始末 (1967)

会津藩馬廻り役の笹原家に起こる、理不尽な主命による悲劇の顛末を描く時代劇。『城』(28号)に掲載された滝口康彦の原作『拝領妻始末』を橋本忍が脚色し、「怪談」以来二年間の沈黙を破って小林正樹が監督した時代劇。撮影は山田一夫。

監督: 小林正樹
出演:三船敏郎、加藤剛、江原達怡、大塚道子、司葉子、仲代達矢、松村達雄、三島雅夫、神山繁、山形勲、浜村純、市原悦子、山岡久乃、青木義朗

上意討ち 拝領妻始末 (1967)のストーリー

会津松平藩馬廻りの三百石藩士・笹原伊三郎(三船敏郎)は、主君・松平正容(松村達雄)の側室お市の方(司葉子)を、長男与五郎(加藤剛)の妻に拝領せよと命ぜられた。武芸一筋に生きてきた伊三郎は、笹原家に婿養子として入った身で、勝気な妻すが(大塚道子)の前で忍耐を重ねて暮してきた。だから、与五郎には自分の轍を踏ませず、その幸福な結婚を願っていたため、なんとしても命を受けるわけにはいかなかった。伊三郎は親友で国廻り支配の浅野帯刀(仲代達矢)に相談し、時をかけてこの話を立ち消えにしようと考えた。しかし、側門人・高橋外記(神山繁)の性急な要請と、笹原一族の安泰を考える笹原監物(佐々木孝丸)の談判を受け、伊三郎は藩命という力の前に屈した。間もなく与五郎といちの祝言が挙げられた。いちの花嫁姿は子を生んだ女とは思えないほど初々しく、その後も夫や姑に従順に仕えた。家督を与五郎に譲った伊三郎はそんないちが、なぜ藩主から暇を出されたのか訝った。いちは十九歳の時、許嫁がいるにもかかわらず一方的な藩命で正容の側室にされ、菊千代を生んだ。その悲惨な運命を受け入れたいちが、喜々として正容の側室になったお玉の方を見た時、正容をけだもののように感じて逆上したのであった。与五郎も伊三郎も、この一部始終をいちから聞いているうちに、いちほど立派な嫁はいないと思った。平和な日が続き、いちはとみを生んだ。そんなある日、正容の嫡子正甫が急死した。菊千代が世継ぎと決ま」り、いちの立場は藩主の母となってしまったために、藩の重臣は与五郎にいちを返上せよと命じた。この人道にそむく理不尽な処置に伊三郎は怒った。これまで笹原家の門閥と格式を守ることにのみ生きてきた伊三郎は、与五郎と共に叛徒になる決心をした。明け方、上意討ちの一隊が笹原家を襲ったが、拉致されたいちは自ら刃の前に身を投げ出して果て、与五郎もいちに折り重って敵刃に倒れた。伊三郎は狂気のように荒れ狂い、外記らを斬りまくった。やがて、藩の非道を幕府に訴えようと、とみを連れて旅に出る伊三郎の前に領内の出入りを見張る帯刀が現われた。役目とはいえ、非痛な思いで伊三郎に対峙する帯刀は、伊三郎の豪剣の前に倒れた。しかし、その伊三郎も追手の銃弾に果てた。その場所鬼神ケ原には、とみの泣き声が藩の非道を訴えるように聞こえていた。

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