醉いどれ天使 (1948)

植草圭之助と黒澤明との共同脚本を黒澤明が演出する。カメラは伊藤武夫が担当。

監督: 黒澤明
出演:三船敏郎、志村喬、山本礼三郎、中北千枝子、木暮実千代、千石規子、久我美子、飯田蝶子、進藤英太郎、清水将夫、笠置シヅ子

醉いどれ天使 (1948)のストーリー

駅前のヤミ市附近のゴミ捨場になっている湿地にある小さな沼、暑さに眠られぬ人々がうろついていた。これら界わいの者を得意にもつ「眞田病院」の赤電燈がくもの巣だらけで浮き上っている。眞田病院長(志村喬)はノンベエで近所でも評判のお世辞っけのない男である。眞田はヤミ市の顔役松永(三船敏郎)がピストルの創の手当をうけたことをきっかけに、肺病についての注意を与えた。血気にはやる松永は始めこそとり合わなかったが酒と女の不規則な生活に次第に体力の衰えを感ずるのだった。松永は無茶な面構えでそっくり返ってこそいるが、胸の中は風が吹きぬけるようなうつろなさびしさがあった。しめ殺し切れぬ理性が時々うずく、まだシンからの悪にはなっていなかったのだ。--何故素直になれないんだ病気を怖がらないのが勇気だと思ってやがる。おれにいわせりゃ、お前程の臆病者は世の中にいないぞ--と眞田のいった言葉が松永にはグッとこたえた。やがて松永の発病により情婦の奈々江(木暮実千代)は、カンゴク帰りの岡田(山本礼三郎)と結託して松永を追い出してしまったため、眞田病院のやっ介をうけることになった。松永に代って岡田勢力が優勢になり、もはや松永をかえりみるものもなくなったのである。いいようのないさびしさにおそわれた松永が一番愛するやくざの仁義の世界も、すべて親分の御都合主義だったのを悟ったとき、松永は進むべき道を失っていた。ドスをぬいて奈々江のアパートに岡田を襲った松永は、かえって己の死期を早める結果になってしまった。ある雪どけの朝、かねてより松永に想いをよせていた飲屋ひさごのぎん(千石規子)が親分でさえかまいつけぬ松永のお骨を、大事に抱えて旅たつ姿がみられた。

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